以前も同じような投稿をしたのだが、もう一度簡単に事実関係を整理する。
まず、「なぜ日本政府は問題を認め、謝罪と賠償をしないのか」ということだ。
このように批判している人は、まず無知だ。
実は、日本政府はこの問題を認めているし、謝罪もしているし賠償(補償と言うべきか)もしている。
ただ、従軍慰安婦問題とは何か、日本政府はどのように関与していたか、という事実認識の点で相違がある。
過去の出来事を検証するには、当時の資料と、生存者の証言が重要であるが、当時の資料をいくら見ても韓国人が主張するような事実は見えてこないし、生存者の証言も矛盾が多い。
証拠も無く、証言の信憑性も無いとすれば、その主張に簡単に同意できないということは、一定の知性を持つ人間ならば当然に理解できるであろう。
日本政府は、そうした「常識的な判断」をしているに過ぎない。
さて、謝罪と賠償についてはどうか。
謝罪については、河野談話や小泉談話がある。
それらの談話をここで紹介するつもりはないが、「そんな談話は聞いたことがない」という人は、自分の無知を自覚し、興味があれば調べてみてほしい。
賠償についてはどうか。
アジア女性基金というものがある。その設立趣旨は下記のようなものだ。
「アジア女性基金は1995年、政府の決定により設立されました。「慰安婦」とされた方々への道義的な責任を痛感した日本政府が、国民と協力して、償い事業など以下の各事業を行うために発足させたものです。 」
これは、正式な国家賠償ではない。しかし、日本はこの問題で賠償することはできない。
なぜか?
すでに多くの韓国人諸君はご存じだろうが、日韓基本条約により、賠償関係は全て解決済みである。
したがって、国際法上は慰安婦に対する賠償も終了しているため、もし新規に慰安婦への賠償を行うとすれば、「請求権の無い人間に対し、支払う必要の無い金銭を、税金を使って支払った」ということになってしまう。
これは、政府としては出来ることではない。
だから、慰安婦への賠償を望んだ日本政府は、「アジア女性基金」を設立するという苦肉の策をとったのだ。
いわば、温情的な措置といえる。
韓国側は、こうした事実関係を十分に把握した上で批判しているだろうか?
私にはそうは見えない。
日韓間では慰安婦をめぐって意見の対立があるが、必ずしもその争点は明らかでない。
少し前に「善悪史観が歴史を歪める」という内容の投稿をしたが、韓国側が日本を糾弾することに夢中になるあまり、慰安婦をめぐる歴史検証はすっかり歪んだ姿になってしまった。
日本側は「慰安婦の存在と関与は認めるが、強制連行ということにまで関与した証拠は無い。」と言う。
韓国側は「慰安婦の存在を認め、関与を認めたのだから悪かったと認めて謝罪すればよい」と言う。
「関与を認めた=韓国側の主張を全て認めた」とはならないのだが、大衆扇動的なネガティブキャンペーンのもとでは、しばしばこうした詭弁が力を持ってしまう。
慰安婦ianhuと挺身隊teishintaiとの意図的な混同。
正規の手続きを経た慰安所の設置と、戦地における性犯罪との混同。
いずれも詭弁だ。
もはやこれは「政治」であり、「歴史」とは何の関係も無い。